実技試験の中でも、「カップテスト(カッピング)」はわたしにとって一番の課題でした。
初回の試験では、風邪の影響で香りがほとんど感じられない状況とはいえ、カップテストの配点40点のうちわずか5点しか獲得できていません。
この記事では、実技試験のカップテスト対策を中心に、わたしが実際に行った練習記録や香味メモを、実物写真とともにすべて公開します。
実技試験の出題構成・配点

コーヒーインストラクター1級の実技試験は、全部で5問構成・合計100点満点。
そのうち、カップテスト(カッピング)関連の問題だけで以下のとおり合計40点が配点されています。
つまり、香りや味を的確に感じ取る力が、合否を左右すると言っても過言ではありません。
- 問1:カップテスト(格付け) 10点
- 問2:カップテスト(産地別カップキャラクター) 5点×2(10点)
- 問3:焙煎豆の外観判別テスト(8種類) 5点×8(40点)
- 問4:カップテスト(ダメージ品) 10点×2(20点)
- 問5:配合分析(2種類の豆の混合比を推測) 2問:10点×2(20点)
この記事では、このうちの「問2(産地別カップキャラクター)」を中心に、わたしが実際に行った練習内容と記録(気づき)をまとめています。
また、「問1(格付け)」「問4(ダメージ品)」については、J.C.Q.Aから購入できる「検体キット(試験対策用)」で練習ができないため、違いの出る理論を自分なりに勉強してまとめました。その内容も残しておきます。
産地別カップキャラクターの問題について

「産地別カップキャラクター」は、ブラインドカッピングで
6種類の選択肢の中から、どの国・地域のコーヒーかを判断するテストです。
わたしが受験した第21回試験では、出題された選択肢は以下の6つ。
2種類のコーヒーについて、ブラインドカッピングして当てます。
このラインナップは、公式から届く検体キット①〜⑥と同じ構成です。
カップテストの中では、練習を重ねることで確実に点を積み上げられるパートといえます。
参考:実際の試験での手順

試験では、すでに挽かれたコーヒー粉がビニール袋にまとめて入った状態で受験者に渡されます。
受験者は、計量スプーン1杯ずつ(おそらく10g前後)自分で取り分け、プラスチック製耐熱カップに入れます。
自分の粉を取り分けたら、隣の人にまわします。
※プラスチックカップは、講習会や検体キットに付属されるものと同じタイプでした。
試験用の机は3名がけテーブルの両端に2名ずつ着席し、中央の席にはお湯の入ったポットが1つ置かれます。
お湯は熱湯ではなく、おそらく90℃前後だと思います。
2人でポットは共有するため、注ぐ順番は譲り合いの精神が大切ですね。
机の上には、以下のセットが用意されます。
- カッピングスプーンを洗う用の紙コップ
- スプーンの水を落とす用のキッチンペーパー
- コーヒー吐き出し用の紙コップ
- 口をすすぐ用の水を入れる紙コップ
タイマーや時計は自分のものを使用します。スマートウォッチは不可なので注意。
もし忘れても、市ヶ谷の試験会場には前方に時計がありましたので大まかな時間の経過はわかります。
わたしの練習方法
練習では、試験と同じように基本的には2カップずつ比較しながら温度の変化も含めて違いを観察しました。
使用した器具は以下の通りです。

- グラインダー(ミル)
- ケトル(わたしは電動ではなく直火タイプ)
- 電子温度計
- スケール
- キッチンペーパー
- プラスチックカップ
- 吐き出し用とスプーンを洗う用のカップ
- カッピングスプーン
特に意識したのは、味の傾向をひと通り把握した後に、ブラインド練習を取り入れること。
これにより、自分が間違えやすい傾向や、どの産地を混同しやすいのかが明確に分かりました。
ブラインドで間違えたもの
・インドネシア WIB-1 を AP-1と回答
・エチオピア G4をブラジル Type2と回答
各産地ごとのカッピング練習は、以下の個別記事で詳しくまとめています。
写真や実際に自分の言葉で残したメモも掲載するので、これから実技試験を受ける方の参考になれば嬉しいです。
カッピング練習記録まとめ(写真付き)
📎 関連記事として、こちらにまとめました
- 【記録1日目】ブラジル Type2 × エチオピア G4
- 【記録2日目】ブラジル Type2 × グアテマラ EPW
- 【記録3日目】コロンビア UGQ × インドネシア WIB-1 × インドネシア AP-1
- 【記録4日目】ブラジル Type2 × コロンビア UGQ
- 【記録5日目】エチオピア G4 × コロンビア UGQ
- 【記録6日目】エチオピア G4 × グアテマラ EPW
カップテスト(格付け)の問題について

「カップテスト(格付け)」は、同じ国のコーヒーのグレードの違いを見極める試験です。
同一産地・同一精選方法の2種類のコーヒーを比較し、どちらがグレードの高い豆かを判断します。
わたしが受験した第21回試験で出題されたのは以下の3地域でした。
どの国・地域かだけでなく、グレード(高・低)の正誤も求められます。
第21回の実技試験は「グアテマラ」でした。わたしはグアテマラは選べたものの、グレードを間違えてしまいました。
参考:実際の試験での手順
基本的には、上記「産地別カップキャラクター」の問題と同じように、あらかじめ挽かれた粉がビニール袋にまとめて配布されます。
まずは粉の色合いと香りから、非水洗式(ブラジル)か水洗式(コロンビア・グアテマラ)かを大まかに判断し、そのうえで、焙煎豆の外観や風味の印象からグレードを推測するのがいいような気がします。
🇧🇷 ブラジル Type2 vs Type4/5

格付け基準:スクリーンと欠点数
– Type2: 300gあたり欠点4点
– Type4/5: 300gあたり欠点36点(Type2の約9倍)
外観の特徴:
– Type2: 大粒で豆面が整っている
– Type4/5: 小粒で豆面にムラがある
検体キットではType2で練習してきたため、Type4/5との違いは欠点豆の混在により、味が少し濁った印象になることでしょうか。「渋みが強く、舌に重く残る」ことを意識しようと思います。
講習会で配布された資料によると、検体については基本的にL値:24で統一されているようです。
L値が同一であっても温度プロファイルの違いが風味の変化を生むとのことですが(焙煎のパート、知識が薄いため理解が違っていたらすみません)、試験用の検体について、そのあたりの情報までは言及されていないため、学んだことが素直に表現される焙煎が行われているだろうと推察しています。
講習会で配布されていたブラジルType2とType4/5の豆を保存してあったので、実際にカッピングしてみました。
経時劣化している可能性が高いと思いつつも、記録を以下の記事に残していますので参考までにご覧ください。
📎 関連記事 【格付け①】ブラジル Type2 vs Type4/5
🇨🇴 コロンビア エクセルソ スプレモ vs UGQ

格付け基準:スクリーンサイズ
– スプレモ:スクリーンS17以上(大粒)
– UGQ(エクセルソ):スクリーンS14以上(中粒〜やや大粒)
標高や欠点数では格付けされない
コロンビアは全体的に生産クオリティが高く、欠点豆は少なめです。
UGQはサイズが小さめというだけで、品質は同程度に良いため、講習会でも「どちらが味として優れているかは、ロッドやその年の出来などによるため難しい」という話がされていました。
コロンビアが出題されたら、運任せになりますが……
「より自分が美味しいと感じる方=スプレモ」と判断するつもりで臨みます。
🇬🇹 グアテマラ SHB vs EPW

格付け基準:標高
– SHB(Strictly Hard Bean):1,300m以上
– EPW(Extra Prime Washed):900〜1,050m程度
特徴:標高が高いほど豆の密度が高い。同じグレードの豆でもサイズにバラツキがある。
グアテマラも生産クオリティが高く、格付け基準は標高のみ。欠点豆が少なく、豆のサイズにば若干ばらつきがあります。標高が高いSHBは、より豆の密度が高いことからグアテマラらしい特徴が強く表現される傾向です。
コロンビアは、酸味が主役でインパクトがある(爽やか)なのに対し、グアテマラは明るい酸がパッと開いた後にやわらかな苦みが心地よく、舌に印象が長く残らない感じがします。
この「酸の質」と「後味の落ち方」で、まずは産地をグアテマラと判別してから、やや味が平坦(穏やか)な印象を受ける方をEPW、というように段階を踏んで判別しようと思います。
グアテマラについても講習会で配布された豆を保存してあったので、実際にカッピングしてみました。
経時劣化している可能性が高いと思いつつ、記録を以下の記事に残していますので参考までにご覧ください。
📎 関連記事 【格付け②】グアテマラ SHB vs EPW
カップテスト(ダメージ品)の問題について

「ダメージ品」とは、いわゆる欠点豆が多く混じったコーヒー豆のことです。
特定の欠点豆が多く含まれていると風味が大きく損なわれるため、それを見極めることは、品質評価において非常に重要。講習会では、代表的な欠点豆として「Rio-Mix」「未成熟-Mix」のサンプルが配布され、実際に正常な豆と比較カッピングを行いながら風味の違いを体験しました。
なお、わたしが受験した第21回試験で出題されたのは、「Rio臭(リオフレーバー)」「経時変化」の2種類。このうち、Rio臭だけは正解できました。
参考:実際の試験での手順

問2(産地別カップキャラクター)と同じく、あらかじめ挽かれた粉がビニール袋に入った状態で配布されます。
検体のベース豆は「ブラジル(非水洗式)」で、L値も講習会と同じなら24に統一されており、粉の見た目だけではほとんど判別ができません。まずは粉を取り分ける段階でしっかり香りを確認し、Rio臭についてはこの時点で判別の目処を立てておくことが大切だと思われます。
香り → テイスティング → 後味の順で比較するのは他のカップテストと同じですが、特に香りと後味に着目して判断します。
👿 Rio-Mix の特徴
薬品と土を混ぜたような「消毒臭」や「肥料のような匂い」が感じられる
香り:薬品のようなツンとした臭い
原因:ブラジル・リオデジャネイロ周辺のヨード臭を含む土壌が要因
ブラジルでは、収穫時に地面にチェリーをしごき落として収穫する農園が比較的多くあります。
この際、ヨード臭を含む土壌からコーヒーチェリーに香りや成分が移ることで、独特のツンとした薬品臭のようなものを発することがあります。
リオデジャネイロ付近にこの土壌が多く存在することから、この香りがする豆を「RIO」と呼ぶようになったと言われています。
🌱 未成熟-Mix の特徴
熟す前に収穫された「未成熟豆」が混入している
香り・風味:青臭さ、えぐみ、渋み
原因:十分に熟していないため、糖分(ショ糖)が少ない
いわゆる熟していない果実ならではの、甘さが不足した「若い」「青い」という印象が近いように思います。
このえぐみのような風味は、コーヒーについては、チェリー(果実)だけでなく種子であるコーヒー豆にもそのまま出てしまうんですね。糖分が少なく、焙煎時もメイラード反応が進みにくく色づきが悪いことも特徴です。
🕐 経時変化(酸化・劣化)の特徴
焙煎から時間が経過し、油分が酸化して風味が劣化
香り・風味:香りが弱い、酸の濁り、重たい口当たり
後味:ざらつき、舌に重く残る
主に焙煎豆の「油分」が空気に触れることで酸化が進むため、特に深煎りの豆では劣化が早く、風味が濁りやすい傾向があります。
香気成分も飛んでしまうことから、香りが弱めで後味の重たさが感じられます。
舌に残るざらつき、重たさを感じると同時に、劣化が進むと若干ゴム臭を感じることもあります。
カッピング練習記録(写真付き)

講習会で配布されていたブラジル Rio-Mixと未成熟-Mixを保存してあったので、実際にカッピングしてみました。
経時劣化も並行して起こっている可能性は高いですが、記録を以下の記事に残していますので参考までにご覧ください。
📎 関連記事
・ダメージ品カッピング記録|Rio-Mixと未成熟豆を比較して分かった違い
まとめ

カップテスト(カッピング)は、わたしにとって一番の課題でしたが、練習を重ねる中で、「香りを嗅ぎ分ける力」や「違和感を見抜く感覚」が少しずつ育っていくのを実感しました。
カップテストの練習を一度もせずに臨んだ実技試験の結果は、5問中1問のみ正解(40点中5点)という悲惨な結果。それでも「もう一度挑戦しよう」と思えたのは、このテストが「コーヒーを楽しむ」という本質に最も近いと感じたからです。
そして、わたしの大好きな「スイーツペアリング」を深めることにも、必ずつながってくれるはず!
香りや味を比べながら、国や精選方法、ダメージの有無を感じ取る──
そのプロセスの中で、コーヒーと向き合う力が少しずつ育っているように思います。
では、まずは試験がんばります!(結果が出たら改めて更新します)
Japan Coffee Qualification Authority 全日本コーヒー商工組合連合会 認定 コーヒーインストラクター検定




