「ダメージ品」とは、いわゆる欠点豆が多く混じったコーヒー豆のことです。
講習会では、代表的な欠点豆として「Rio-Mix」と「未成熟-Mix」のサンプルが配布され、実際に正常な豆と比較カッピングを行いながら、風味の違いを体験しました。
今回は、そのときに配布された「ブラジル Rio-Mix」と「未成熟-Mix」を保存してあったので、自宅で改めてカッピングを行い、わたしが感じた違いを記録しました。
なお、豆の状態でできるだけ密封して保管していましたが、真空保存ではなく半年ほど経過しているため、経時劣化している可能性も高いと思います。それでも、学びの記録として残しておこうと思います。
使用した豆とカッピング条件

「Rio-Mix」「正常豆」「未成熟-Mix」の3種類で比較しました。
カッピングはすべて、J.C.Q.A公式のテキストに合わせた条件で行い、粉量(7g)・湯量(135g)・抽出時間はできるだけ統一しています。
😈 ブラジル Rio-Mix
薬品と土を混ぜたような「消毒臭」や「肥料のような匂い」が感じられる
香り:薬品のようなツンとした臭い
原因:ブラジル・リオデジャネイロ周辺のヨード臭を含む土壌が要因
非水洗式の正常なブラジルにRio臭の豆が混ざっている状態です。
補足:
ブラジルでは、収穫時に地面にチェリーをしごき落として収穫する農園が比較的多くあります。
この際、ヨード臭を含む土壌からコーヒーチェリーに香りや成分が移ることで、独特のツンとした薬品臭のようなものを発することがあります。リオデジャネイロ付近にこの土壌が多く存在することから、この香りがする豆を「RIO」と呼ぶようになったと言われています。
🌱 ブラジル 未成熟-Mix
熟す前に収穫された「未成熟豆」が混入している
香り・風味:青臭さ、えぐみ、渋み
原因:十分に熟していないため、糖分(ショ糖)が少ない
非水洗式の正常なブラジルに未成熟の豆が混ざっている状態です。
補足:
いわゆる熟していない果実ならではの、甘さが不足した「若い」「青い」という印象が近いでしょうか。
このえぐみのような風味は、コーヒーチェリーについては、果実だけでなく種子のコーヒー豆にもそのまま出てしまうんですね。糖分が少なく、焙煎時もメイラード反応が進みにくいため色づきが悪いことも特徴です。
参考: 🇧🇷 ブラジル 正常豆(Type2)

スクリーンサイズと欠点数でグレードを決定(Type2、Type4/5)
ムンドノーボ、カトゥアイ、イカトゥなどがメイン品種。
他の中南米の産地に比べて標高が低い。機械での収穫、直接しごき落とす収穫が多い。
教本に記載されている特徴:甘みを伴った、柔らかな苦味と適度な酸味
カッピング記録
各段階での写真も含めて、わたしの感じたことを記録をしていきます。
講習会で配布された豆は、焙煎時に明度(L値)を合わせてあるようで、豆の状態の豆面にはほとんど差がありませんでした。
粉の見た目と香り

写真:Rio(左)/正常(中央)/未成熟(右)
まずは粉の見た目です。
3種類とも、ぱっと見た印象では大きな違いはなく、同じような色合いをしています。
ただし、香りを嗅いでみると明確な違いがありました。
Rio-Mixは、粉を軽く揺らしただけでツンと鼻を刺すような刺激臭が立ちのぼります。アルコールのような、薬品のような、独特のにおいです。この段階で「Rio-Mixだな」と判別できるほど、香りの違いがはっきりしています。
一方、未成熟-Mixは香りも見た目もほとんど差が感じられません。
クラスト(ブレイク時)の比較

お湯を注いだ直後の見た目には、3種類とも大きな違いはありません。
ただし、香りに関しては明らかにRio-Mix(左)が異質。湯気とともに、ツンとした香りが立ち上がります。
未成熟-Mix(右)は、やはり香りでは違いがわかりませんでした。
強いて言えば、液面のアクがやや多いかな?という気がしなくもない、という印象。
この時点で、「未成熟はまだ難しいけれど、Rioは明確にわかる」という手応えがありました。
テイスティング記録

写真:Rio(左)/正常(中央)/未成熟(右)
😈 ブラジル Rio-Mix
7分半ごろの熱い状態の時から、啜るとツンとした刺激臭が鼻に抜け、アルコールのような香りが鼻腔に残ります。
味そのものは正常豆に近く、未成熟-Mixほど違和感は感じませんが、香りがずっと残るため、正常豆とは明らかに別物に感じました。
20分を過ぎてやや冷めてくると、リオ臭はさらに強くなります。
あえてRix-Mixを好んで購入する方もいると講習会で話がされていましたが、確かに個性的と言えなくもないです。
ジンのような特徴のあるアルコールが好きな方もいるので、そんなイメージなのかな?
わたしは苦手でしたが、それだけに試験で出題された場合も判別しやすいと思います。
🌱 ブラジル 未成熟-Mix
9分ごろの段階で、酸がやや弱く、舌の奥に少し渋みが残る印象でした。
正常豆と比べると味が重く、舌や喉の奥の方にべたっと残ります。
14分を過ぎると、渋みがよりはっきりしてきて、酸がよりぼやけていく感じがありました。
20分ほど経って冷めてくると、酸が少し戻ってきて少し軽くなり、温かいときよりは飲みやすく感じましたが、やはり後味に渋さが残ります。
まとめ

写真:Rio(左)/正常(中央)/未成熟(右)
今回のカッピングでは、代表的なダメージ豆を実際に比べてみることで、欠点豆が与える風味の影響をより具体的に感じることができました。
Rio-Mixは、粉の段階からすでにツンとした臭いがあり、湯を注ぐと、その特徴がより明確に現れます。
試験でも最も判別しやすいタイプだと感じました。
一方、未成熟-Mixは見た目や香りでの判別が難しく、味の印象から違いを掴むことが重要。
渋みや青っぽさが残るため、「後味の重さ」や「舌に残る違和感」に注目することが大切だと思います。
試験において確実に得点するために重要なのはもちろん、欠点豆は豆本来のクリーンさを損なう要因であり、実生活においても異常を感じ取る感覚が磨かれると感じました。




